漢方と西洋医学:うまく使い分ける知恵
風邪を引いたら葛根湯。なんとなく調子が悪いとき、ドラッグストアで漢方薬を手に取ったことがある方は多いのではないでしょうか。漢方は日本の医療制度では保険適用されていて、約148種類の漢方薬が処方可能。実は世界的に見ても、伝統医学をここまで正式に医療制度に組み込んでいる国は珍しいんです。
でも、「なんとなく体によさそう」というイメージだけで使っている方がほとんどじゃないでしょうか。漢方と西洋医学、それぞれの得意分野を知っておくと、もっと上手に健康管理ができますよ。
西洋医学が得意なこと、漢方が得意なこと
ざっくり言うと、西洋医学は「原因がはっきりしている病気」の治療が得意です。細菌感染なら抗生物質、がんなら手術や抗がん剤、骨折なら固定や手術。原因を突き止めて、ピンポイントで攻める。
一方、漢方が得意なのは「検査では異常がないのに調子が悪い」というケース。冷え性、疲れやすい、なんとなくだるい、胃腸の調子が悪い——西洋医学だと「異常なし」で終わってしまいがちな、いわゆる「未病」の状態に力を発揮します。
これは決して「漢方のほうが優れている」とか「西洋医学は冷たい」という話ではありません。得意分野が違うんです。
中年期に役立つ漢方の例
50代、60代で漢方が活躍する場面は意外と多いんです。先日、知り合いの漢方医(日本東洋医学会専門医)に聞いた話をいくつかご紹介します。
更年期のさまざまな症状
ホットフラッシュやイライラ、不安感。女性の更年期症状に対して、加味逍遙散(かみしょうようさん)や当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)がよく処方されます。ホルモン補充療法(HRT)に抵抗がある方の選択肢として、多くの婦人科でも処方されています。
冷えやむくみ
西洋医学には「冷え」という概念がほとんどありません。でも漢方では「冷え」は重要な治療対象。当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう)なんて名前は長いですが、手足の冷えに悩む方には定番の処方です。
胃腸の不調
食欲がない、胃もたれする、お腹が張る。六君子湯(りっくんしとう)は、こういった胃腸の不調に広く使われていて、西洋医学の消化器内科医も処方することが多い漢方薬です。
注意してほしいこと
「漢方は自然のものだから安全」と思っている方がいますが、これは大きな誤解です。漢方薬にも副作用はあります。たとえば甘草(かんぞう)を含む漢方薬を複数服用すると、偽アルドステロン症というむくみや血圧上昇を引き起こすことがあります。
また、西洋薬との飲み合わせにも注意が必要。ワーファリン(血液をサラサラにする薬)を飲んでいる方が、自己判断で漢方薬を追加するのは危険です。必ず主治医か薬剤師に相談してください。
ドラッグストアで手軽に買えるのは漢方の良いところですが、本格的に漢方治療を受けたい場合は、漢方専門外来のある病院を受診するのがおすすめです。ツムラやクラシエのホームページで、漢方を処方できる医療機関を検索できます。
漢方と西洋医学は敵同士ではありません。うまく使い分けて、あるいは組み合わせて、自分の体に合ったケアを見つけていけるといいですね。
※漢方薬も「薬」です。自己判断での服用は避け、医師や薬剤師に相談の上で使用してください。特に持病のある方、他の薬を服用中の方は必ずご相談を。